卵巣性ステロイドの減少と脳下垂体前葉ホルモンの過剰は、更年期障害を構成する最も重要な身体因子です。エストロゲンを補充してこの身体的ストレッサーを解消することは合理的な治療法であり、特にほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗などの血管運動神経症状に対しては、極めて有効とされています。
ホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)は、1990年代初頭に日本でも本格的に導入されていますが、2002年に米国NIHが企画したWHI(Women's Health Initiative)Randomized Control Trialに対する中間報告が公表されて以降、HRTに対する副作用(冠血管疾患、脳卒中、静脈血栓症、乳癌など)やリスクばかりに関心が集まり、低迷していました。
このような状況を打開すべく、2009年に日本産科婦人科学会・日本更年期医学会による「ホルモン補充療法ガイドライン2009年度版」が刊行されました。
現時点でのHRT施行原則は概ね以下のように集約されます。
1)閉経前後に種々の精神身体症状に悩まされて積極的介入を求める患者に対し
2)その人のリスク因子を勘案したうえで
3)症状のプロファイルから選択しうる複数のオプションとそのリスクとベネフィットを提示し、HRTを行うことに合意が得られた症例に対して
4)効果を発現しうる最少容量のエストロゲン(とプロゲストーゲン)を処方する
5)短期間で効果が得られた場合には定期的な副作用のスクリーニングを行いながら処方を継続するが
6)その後の長期処方の必要性については定期的に患者と話し合う
HRTに使用しうる薬剤の選択幅はここ数年で大きく広がり、エストロゲンの種類(結合型エストロゲン、エストリオール、17β-エストラジオール)用量(通常量、低用量)投与経路(経口、経皮)についても患者のリスク因子と嗜好を勘案して決めていきます。
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