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1990年にJohnsonは線虫(Caenorhabditis elegans)からage-1遺伝子の突然変異体を発見しました。age-1変異体の平均寿命と最長寿命は、野生体に比べておよそ2倍も長く、成熟前の発育速度や産卵数は野生体と同じであったことから、老化の定義である「老化は成長期(性成熟期)以降、全ての種に起こる加齢に伴う生理機能の低下」に合致すると考えられました。
age-1の発見以降、線虫から寿命が延長する多くの突然変異体が見つかりました。これらの変異体から同定された原因遺伝子は、インスリン/インスリン様増殖因子(insulin-like growth factor-1:IGF-1)シグナルを介したエネルギー代謝に関わる遺伝子が多く、age-1はインスリン/IGF-1シグナル下流に存在するヒトでのPI3(phosphoinositide3)キナーゼの相同遺伝子です。また、1993年に見つかった長寿突然変異体のdaf-2は、インスリン/IGF-1シグナルに関わるインスリン/IGF-1受容体の相同遺伝子です。
線虫でのdaf遺伝子群は、幼虫の時に外部環境が悪化すると、それに耐えられるように代謝経路や体の構造を変えて耐性幼虫とねり、生存期間を延長する耐性幼虫化に関わる遺伝子です。このように遺伝子変異によるインスリン/IGF-1シグナルの抑制は、細胞内での代謝を低く抑え、その状態を長く続けさせることによって、個体の寿命を延長させると考えられています。
1955年に見つかった長寿突然変異体のclk-1は、体内時計に異常を生じて、成熟前の発育速度に遅れがみられるなどage-1やdaf-2とは異なる寿命の延長形態を示しました。clk-1は、ミトコンドリア内の電子伝達系で働くユビキノン(コエンザイムQ)の合成酵素です。それ以降、ヒストン脱アセチル化酵素であるサーチュイン遺伝子など多くの長寿関連遺伝子が続々と報告されました。しかし、これら長寿関連遺伝子のひとつで生物の老化機構を説明することはできず、これら遺伝子のひとつひとつが老化や老化速度にどの程度の影響を及ぼしているかも明らかではありません。
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