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発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglbinuria:PNH)は、1個あるいは数個の造血細胞のPIGA遺伝子の突然変異を原因とする、溶血性貧血・深部静脈血栓症・骨髄不全を3主徴とする後天的な血液疾患です。PIGAはグリコシルホスファチジルイノシトール(giycosyl phosphatidyl inositol:GPI)アンカー生合成の最初のステップに必須の遺伝子で、PIGAの変異により造血幹細胞はGPIアンカー型蛋白質(GPI-AP)が欠損した細胞となります。
GPI-APは糖脂質であるGPIアンカーによって細胞膜につなぎ止められている蛋白質の1群で、酵素や接着因子、受容体などの150種類以上の蛋白質が知られています。補体制御因子である崩壊促進因子(decay accelerating factor:DAF)やCD59もGPI-APで、GPIアンカーが欠損するとこれらの補体制御因子を含む全てのGPI-APが細胞膜に発現できず、細胞内で壊されます。
GPI欠損細胞となった造血幹細胞クローンは正常細胞を凌駕して増殖し、各血球に分化します。感染などをきっかけとして補体が活性化すると、GPI欠損の赤血球ではGPI-APである補体制御因子が発現していないので、補体の攻撃を抑制できず、溶血発作を起こしてPNHを発症します。
DAFは補体活性化の初期ステップで働き、C3転換酵素の不活化と分解を担い、CD59は終末ステップの膜侵襲複合体(membrane attach complex:MAC)を阻害します。DAFとCd59のどちがより溶血発作の阻止に重要であるかは、それぞれの単独欠損症の報告からCD59が重要であることがわかっています。
GPI-APの生合成と輸送に関与する遺伝子は27個知られていますが、PIGAは唯一のX染色体上の遺伝子で、男女とも機能的アレルが1本であることから一度の体細胞突然変異でGPI欠損細胞になります。他の遺伝子は全て常染色体上にあるので、1つの造血幹細胞の遺伝子の2つのアレルに同時にヒットが起こる確率は非常に低く、PNH症例のほとんどはPIGA遺伝子の変異を原因としています。
近年、次世代シーケンサーを用いた解析によってPIGTを責任遺伝子とするPNH(PIGT-PNH)はみつかり、報告された4例全てで1本のアレルのPIGT遺伝子に生殖系列の変異があるところに、造血幹細胞においてもう片方のアレルに体細胞突然変異が起こり、20番染色体のPIGT周辺領域の欠損が起こって発症していました。このように今後まれですが生殖系列の変異が重なれば、他の遺伝子を責任遺伝子とするPNHがみつかる可能性があります。
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