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発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断ガイドラインは厚生労働科学研究班において作成され、2020年に改訂版が公表されています(※)。
診断基準によると、臨床的に溶血性貧血を認める症例(LDHが正常上限の1.5倍以上)で、末梢血の赤血球でCD59とDAFの染色によるフローサイトメトリー検査を行い、両者を欠損した細胞が1%以上あればPNHとします。顆粒球や単球など他の血球系でも同様にCD59とDAFの発現が欠損している細胞がみられますが、赤血球のフローサイトメトリー検査以外は保険収載されていません。
PNHの治療
第一選択薬は補体因子C5に対するヒト単クローン抗体、エクリズマブですが、その適応についてはPNH診療ガイドラインに詳細に示されています。エクリズマブはC5に結合し、その活性化を阻害することによりアナフィラトキシンC5aの遊離とMAC形成を阻害します。エクリズマブの投与は貧血のみならず、溶血に由来する血栓症、平滑筋調節障害、倦怠感などを改善し、患者のQOLを劇的に向上させますが課題も残されています。
エクリズマブはPNHクローンを減少させることはできず、むしろPNH赤血球は増加するため、薬剤中止により激しい溶血が起こる可能性があります。さらに。異常赤血球膜にC3bが蓄積することによりそのレセプターを有するマクロファージなどの食細胞に貪食されて、血管外溶血が顕在化し輸血を要する症例もあります。また、国内で約3%の頻度でみられるC5の遺伝子多型(Arg885His)をもつPNH症例にはエクリズマブが結合できないため、治療効果が認められません。
さらに、補体活性を抑制することによる重症感染のリスクがあります。ナイセリア菌(髄膜炎菌、淋菌)やインフルエンザ桿菌、肺炎球菌など莢膜をもつ細菌の防御には、補体のMACによる殺菌が必須です。特に髄膜炎菌感染症に対しては、エクリズマブ投与前にワクチン接種が義務付けられていますが、摂取をしていても国内外で死亡例が報告されています。
最近は非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)や全身型重症筋無力症が追加され、エクリズマブの適応疾患が広がっています。そのため、さまざまな補体阻害薬が開発されています。抗C5抗体を改変したリサイクリング抗体として体内寿命を長くしたravulizumabやcrovalimab、C5のインヒビターや分子干渉性RNA、さらにC5より前のステップであるC3no活性化の阻害薬compstaimや補体の第2経路のみの阻害剤として、factor Dやfactor B、properdinの阻害薬が開発されています。
このように開発が進み、適応症が拡大されることにより、低価格でより安全な補体阻害剤が実用化されると期待されますが、PNHにおいては骨髄不全に対する改善効果は認められないので、症例によっては免疫抑制療法を必要とします。
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