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鉄は体に必要不可欠である一方、体内に過剰に蓄積するとフリーラジカル産生が促進され、臓器障害や発がんにも関与し、生命予後に悪影響を与えます。
体内に存在する鉄を体外に排泄する機構は我々の身体には備わっておらず、鉄の生理的喪失はほとんどありません。消化管からの鉄吸収も、わずかな鉄の喪失を補う量しか通常行われていません。つまり鉄代謝はほぼ閉鎖回路となっており、鉄代謝調節因子へプシジンの存在もあり、鉄の量的バランスは厳密に制御されています。
たとえば赤血球輸血などで体外から鉄が入り続けると、排泄機構がないため鉄過剰症が生じます。わが国の鉄過剰症の9割以上は、難治性貧血を呈する血液疾患などで長期間行われた赤血球輸血に起因するものです。
体内に鉄が過剰になると、鉄は全身の臓器に沈着し障害をもたらします。特に肝臓や心臓などの臓器障害が起こると、予後にも悪影響を及ぼします。このため鉄過剰症のモニタリングとして血清フェリチン値が指標とされています。血清フェリチン値は体内総鉄貯蔵量を簡便に示しきわめて有用ですが、結果として体に蓄積してしまった鉄量を反映することに注意が必要です。その時々に体内に存在する毒性を示す鉄を直接的に示すわけではないため、より直接的に示すマーカーが古くから求められてきました。候補として、非トランスフェリン結合鉄(non-transferrin-bound iron:NTBI)とlabile plasma iron(LPI)があります。
NTBI
血液中では、鉄はトランスフェリン(Tf)と結合して運搬されています。Tfは豊富で、鉄による飽和率は通常3割程度です。しかし長期間の赤血球輸血などで体外からの鉄の流入が続くと、鉄を排出することができないため、行き場をなくした鉄がでてきます。過剰な鉄は、血液中ではまずTfに結合しますが、高度の鉄過剰ではTfも完全に飽和し、Tfと結合できなくなった鉄が出現します。これがNTBIです。NTBIは血液中に存在するさまざまな物質と結合していますが、その結合が非常に緩く反応性に富み、しかも全身の細胞に非選択的に容易に蓄積し毒性を惹起するため、鉄過剰時の毒性の本体として古くから注目されてきました。しかし、測定は煩雑で高コスト・低感度であったため研究や臨床への応用は十分に進んでいません。
現在、この測定系の感度をあげる工夫や、生化学自動分析装置対応試薬の開発が行われ、2価鉄と結合すると特徴的な吸光度を呈する発光鉄キレート剤や鉄還元剤などを組み合わせ、血清検体を前処理なく10分で測定できる方法が開発されています。
LPI
NTBIのなかでも、より酸化活性を有する分画がLPIです。LPIの測定は臓器障害予測などに有用だと考えられています。
LPIがもつ酸化活性を、血清中セルロプラスミンの酸化力を介してTtinder反応と呼ばれる発色反応へ導く形の測定系が構築され、最終的に比色定量となり自動分析装置対応測定試薬が開発されています。
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