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糞便微生物移植法(fecal microbiotaransplantation:FMT)の概念は4世紀の中国で登場しています。「肘後備急方」という書物に、下痢患者に対して黄龍湯(便汁)を飲ませることによって症状が改善すると書かれています。この治療法自体は書物が記される以前から行われていたと推察され、非常に歴史の古いものです。一方、近代医学はペニシリンの発見を皮切りに
、抗菌薬によって細菌を消滅させることに力点が置かれてきました。世の中には”滅菌”や”無菌”と称する日用品が数多く出回り、細菌の存在全てを悪とみなす潮流が強まっている中で、細菌の塊である他の人の便を取り込むFMTが試みられることはありませんでした。
しかし、新規抗菌薬の開発とそれに対する耐性菌の発生といういたちごっこが繰り広げられるなかで、抗菌薬投与に起因した細菌感染症が出現します。これがCDIであり、抗菌薬投与によって多様性が失われた(dysbiosis)腸管内で常在菌の1つとして存在していたC.difficileが急激に増殖して、下痢・発熱・腹痛などを引き起こします。さらに問題なのは、バンコマイシンやメトロニダゾールなどの抗菌薬で治療した後も、多くの症例で再燃することです。これを機に、抗菌薬一辺倒の感染症治療を再考する必要性が理解されるようになります。これがFMT再発見の契機となり、趙尚細菌叢の再整備が治療目標になりました。質・量ともに優れた健常人の腸内細菌叢を患者の腸管内に移植することによって、C.difficileの異常増殖が許されない環境を作り出そうという発想の転換が行われました。
FMTの手技は、17世紀のイタリアで、獣医学の世界で初めて試みられたことが確認され、ヒトに対する応用としては、1958年に4名の偽膜性腸疾患患者に対して施行されたFMTが初めての報告とされています。そこから本格的に臨床現場で普及するまで間がありましたが、CDIによる死者が急増し、抗菌薬治療後の再発例が頻発するようになったことでFMTが再注目されました。
この流れを決定付けたのが、2013年にオランダで発表されたvon Noodらの研究で、既存のバンコマイシン治療に比べて圧倒的にFMT後のCDIの再発率が低いことが報告されました。また、CDI治療に用いられる新規抗菌薬であるフィダキソマイシンについてもFMTと有効性比較が行われ、FMTの有意性が示されました。
米国消化器病学会のガイドラインでは、3回以上の再発例に対してFMTを検討することが推奨されています。
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