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理化学研究所では細胞由来NKT細胞(iPS-NKT細胞)を開発し、安定したNKT細胞製造が可能となりました。通常のT細胞が多様性に富むT細胞受容体(TCR)を発現し、HLA(human leukocyte antigen)に提示されたペプチド抗原を認識するのに対して、NKT細胞は不可変なTCR(インバリアントTCR)を発現し、MHC(major histocompatibility comolex)クラス1様分子であるCD1dに提示された糖脂質抗原を認識する自然免疫系のリンパ球です。
NKT細胞が認識する糖脂質抗原として、α-Galactosylceramide(αGalCer)が有名です。抗原を認識し活性化したNKT細胞は、パーフォリングやグランザイムといった様々な殺細胞因子の産生により標的細胞に対して直接的な細胞障害活性を示します。同時にインターフェロンγなどのサイトカインを介してNK細胞やT細胞を活性化するとともに、樹状細胞の成熟化を介してT細胞免疫を賦活化します。
理化学研究所では、マウスにおける核移植技術やiPS細胞技術を用いてNKT細胞を人工的に製造する方法を開発しており、ヒトのNKT細胞からiPS細胞を作製し、そのiPS細胞からNKT細胞(iPS-NKT細胞)を誘導することに成功しています。興味深いことにiPS-NKT細胞は元のNKT細胞では傷害しなかった腫瘍細胞株に対してもパーフォリンやグランザイムを介した細胞傷害活性を示しました。そしてiPS-NKT細胞にもNK細胞を活性化する作用があることを確認しました。また元のNKT細胞はインターフェロンγ(IFN-γ)とインターロイキン4(IL-4)のどちらも産生しますが、iPS-NKT細胞は抗腫瘍活性に関係するIFN-γのみを強く産生することからも、iPS-NKT細胞は元のNKT細胞より抗腫瘍作用に長けた細胞であることが示唆されています。
iPS細胞由来の組織や細胞を用いた再生医療の場合、未分化細胞や目的外細胞混入による腫瘍化が一つの懸念事項になります。iPS-NKT細胞の安全性については、乾寒天コロニー試験において腫瘍形成能がないこと、造腫瘍試験として免疫不全マウスに移植したiPS-NKT細胞が最長1年間腫瘍形成しないことを確認しています。また、iPS-NKT細胞の製造規格として未分化マーカーであるLIN28の発現が確認できないことを品質条件として出荷しています。
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