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糖尿病治療薬 SGLT2阻害薬

ナトリウム依存性グルコース輸送体2(sodiumdependent glucose transpoter 2:SGLT2)阻害薬は、近位尿細管でのグルコースの再吸収を抑制し、尿中にグルコースを排泄することにより高血糖を改善します

糖尿病治療薬 SGLT2阻害薬

1)作用機序
ナトリウム依存性グルコース輸送体2(sodiumdependent glucose transpoter 2:SGLT2)阻害薬は、近位尿細管でのグルコースの再吸収を抑制し、尿中にグルコースを排泄することにより高血糖を改善します。グルコースは親水性化合物であるため、細胞膜の脂質二重層を通過できず、膜蛋白質の輸送体が膜通過に必要です。糖輸送担体は、ほぼ全ての細胞に存在し、細胞内のグルコース濃度勾配に従い拡散輸送するGLUT(glucose transpoter)と、主に小腸や腎・心臓などの上皮に存在し、Na+濃度勾配を利用して糖輸送を行うナトリウム依存性グルコース輸送体(SGLT)があります。SGLTは1〜6の6種類のアイソフォームが知られています。近位尿細管の上部でグルコース再吸収を行っているのはSGLT2です。血糖値が正常である健常人における尿糖排泄閾値は170〜180mg/dLです。SGLT2阻害薬投与により閾値が低下し(70〜90mg/dL)、尿糖の排泄が増加します。尿糖排泄により、血糖の改善に加え、体重が減少します。

2)副作用
・脱水、体液量減少
尿糖排泄増加に伴う浸透圧利尿で尿量が増加するため、脱水・体重減少が引き起こされます。重篤例では脳梗塞や心筋梗塞、高血糖高浸透圧症候群も報告されています。十分な水分摂取が必要です。
・低血糖
単独では低血糖は起こりにくいとされています。
・尿路、性器感染症
尿糖増加に伴う直接的な副作用として、尿路・性器感染症が起こります。本薬剤使用患者では尿沈渣も定期的に検査し、細菌尿の有無を確認します。女性に多く認められます。
・皮膚関連事象
副作用で最も多く報告されているのが皮膚関連事象です。薬疹・発疹・湿疹・全身性皮疹が多く、蕁麻疹や紅斑も認められます。重篤例では、Stevens-johnson症候群(*)に至った症例もあります。機序は明らかではありませんが、皮膚細胞の水分量減少に伴う乾燥がひとつの引き金になっている可能性があります。
・ケトアシドーシス
内因性のインスリン分泌能が低下している症例や、極端な糖質制限を行っている例でケトアシドーシスは報告されています。また、正常血糖ケトアシドーシスも報告されており注意を要します。

3)臨床検査値の変動
・尿糖陽性
尿糖排泄が増加するため、尿糖陽性となります。
・ヘマトクリット上昇
Na排泄亢進や浸透圧利尿による循環血漿量の減少などにより、ヘマトクリットが上昇すると考えられています。また、エリスロポエチン濃度上昇によるヘマトクリット上昇も報告されています。定期的に検査し、内服前よりもヘマトクリット値が高値となる場合は十分な注意を要し、脱水が疑われるような場合には血栓症の増加なども懸念されるため、内服中止を考慮します。
・血清1.5-AG低下
1.5-AGは、1.5-AG/フルクトース/マンノース選択的共輸送体であるSGLT4を介して、尿細管で再吸収されます。SGLT4はグルコースにも親和性があるため、尿細管における1.5-AGの再吸収は、グルコースによっても競合阻害を受けます。SGLT2阻害薬内服中には、尿糖が増加するため、1.5-AGの再吸収が低下し、血清1.5-AGが低下します。
・ケトン体上昇
尿糖排泄増加に伴い、脂肪酸代謝が亢進し、体重減少とケトン体産生が増加します。インスリン分泌低下症例やシックデイではケトアシドーシスが生じることがあり、注意を要します。
・尿酸低下
尿細管でのグルコース濃度上昇により、GLUT9によるグルコース・尿酸の輸送系が亢進し、尿酸排泄が促進する可能性が示唆されています。
・HDLコレステロール上昇
EMPA-REG OUTCOME studyでは、HDLコレステロールが3〜4mg/dl上昇し、心血管イベントの抑制に影響した可能性が示唆されています。

(*)スティーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS、皮膚粘膜眼症候群):高熱や全身倦怠感などの症状を伴って、口唇・口腔、眼、外陰部などを含む全身に紅斑、びらん、水疱が多発し、表皮の壊死性障害を認める疾患

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