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癌と糖尿病はそれぞれ「国民病」と呼ばれる身近な病気です。一見、全く関係がなさそうなこの2つの病気ですが、日本人の糖尿病患者の死因で最も多いのは癌です。したがって、糖尿病患者は、定期的に癌の検診も受ける必要があります。
癌と関連があるのは主に2型糖尿病です。加齢、男性、肥満、運動不足、不適切な食事(赤肉、加工肉の摂取過剰、野菜・果物・食物繊維の摂取不足)、過剰飲酒、喫煙は、2型糖尿病と癌に共通する危険因子であり、そうした生活習慣がある糖尿病患者に癌の発症が多いのは、ある意味当然のことといえます。また、生活習慣以外にも2型糖尿病の高インスリン血症、高血糖、炎症が癌の発症につながっていることが示唆されています。
2型糖尿病では、ブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込むホルモンであるインスリンの働きが悪くなるため(インスリン抵抗性)、膵臓が大量のインスリンを分泌します。つまり、インスリン抵抗性によって、高インスリン血症になります。高インスリン血症は、インスリン様増殖因子(IGF)結合蛋白を減少させ、結果としてIGFの活性を上昇させて細胞増殖や、アポトーシスの抑制など癌の発生・進行を誘導します。また、インスリンは肝臓でエストロゲンの1種であるエストラジオールを増加させる作用を持っており、子宮内膜癌につながる可能性も推測されています。
高血糖自体が起こす「慢性の炎症」が、癌を引き起こしているとの説もあります。肥満(特に内臓肥満)により、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが低下することで、インスリン抵抗性が進行するためです。
他にも、肝癌リスク上昇の原因として、糖尿病の人に多い脂肪肝との関連が指摘されています。脂肪肝とは肝臓の30%以上が脂肪化している状態で、自覚症状はありません。これまで日本人の肝癌は、B型・C型肝炎ウイルスまたはアルコール性肝炎が原因の人が多かったのですが、最近は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から肝硬変、そして肝臓癌になる人が増えています。すなわち、食事療法、運動療法、禁煙、節酒、そして薬物療法で、血糖値を良好にコントロールすることが癌のリスクの軽減にもつながるのです。
暴飲暴食や心身のストレスもなく、特に思い当たる原因がないのに、なぜか血糖コントロールが悪化してきた場合には、癌が隠れている場合があので、腹部超音波検査や大腸内視鏡検査などによる精査を検討しましょう。
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