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1)作用機序
ビグアナイド(biguanide:BG)は主として肝臓でのインスリン抵抗性改善による糖新生制御により、血糖を低下させます。肝臓における糖新生の制御にはアデノシン1リン酸(adenosine monophsphate:AMP)キナーゼ(AMP-activated protein kinase:AMPK)の活性化が関与しています。肝臓では糖新生系酵素の発現を制御することでブドウ糖放出を低下させ、またアセチルCoAカルボキシラーゼ(acetyl-CoA carboxylase:ACC)の活性や、脂肪酸合成酵素(fatty acid synthase:FAS)発現を抑制することで肝臓の脂肪酸合成の減少と脂肪酸酸化をもたらし、脂質改善作用を示します。また、AMPK活性化とともにグルカゴン受容体シグナルの抑制効果が報告されています。骨格筋においては、活性化されたAMPKは糖輸送担体の発現を増加させ、その細胞膜上への移行を促進し、ブドウ糖取り込みを増加させます。近年、ビグアナイド薬により腸内細菌叢が変化することが示され、腸管バリア機能に重要なムチン層の維持に必要である常在菌Akkermansia muciniphilaを増加させることが報告されています。また、AMPKは哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mammalian taget of rapamycin:mTOR)シグナルの抑制を通じて細胞の増殖を制御します。悪性腫瘍の発生や進展抑制に対するいくつかの前向き臨床研究が進行しています。
2)副作用
・消化器症状
最も多い副作用は、下痢・胃腸障害などの消化器症状です。投与開始の比較的早期から出現するため、服用アドヒアランスの低下につながります。少量より投与し、容認性をみながら増量します。
・乳酸アシドーシス
乳酸アシドーシスは、重篤な副作用(致死率50%)です。乳酸の産生過剰あるいは代謝障害により、血中の乳酸が5.0mmol/L以上に上昇した結果、代謝性アシドーシスを生じた状態であり、緊急の対応が必要です。BG薬のうちフェンホルミンで高頻度にみられますが、現在主に使用されているメトホルミンによる発生頻度は低いとされています。ハイリスクの患者(腎機能障害、透析患者、肝機能障害、過度のアルコール摂取者、75歳以上の高齢者、ヨード造影剤使用患者)への投与は避ける必要があり、特に腎機能障害患者に対して注意が必要です。中等度以上の腎機能障害(男性で血清クレアチニン濃度1.3mg/dL以上、女性で1.2mg/dL以上)では禁忌です。
3)臨床検査値の変動
・血中インスリン、インスリン様成長因子-1低下
インスリン抵抗性を改善することにより、血中インスリンや血中インスリン様成長因子-1(insulin-like growth factor-1:IGF-1)を減少させます。その結果インスリン受容体やIGF-1受容体を介する細胞増殖経路のシグナル伝達を抑制することが報告されています。
・ビタミンB12低下
メトホルミンの長期投与は、ビタミンB12欠乏症と関連している可能性があります。特に貧血や抹消神経障害を有する患者では、ビタミンB12を定期的に測定する必要があります。
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