尿失禁や失神を起こすような自律神経障害で発病し、それが経過前半期の主要症状である多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)をシャイ・ドレーガー症候群と呼んで区別しています。 組織病理所見はオリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebellar atrophy:OPCA)や線条体黒質変性症と共通であることから、同一の疾患と考えられています。この二つの病型においても、進行すると自律神経障害を伴います。
多系統萎縮症は、成年期(30歳以降、多くは40歳以降)に発症し、組織学的には神経細胞とオリゴデンドログリアに不溶化したαシヌクレインが蓄積し、進行性の細胞変性脱落を来す疾患です。初発から病初期の症候が小脳性運動失調であるものはオリーブ橋小脳萎縮症、パーキンソニズムであるものは線条体黒質変性症、そして特に起立性低血圧など自律神経障害の顕著であるものはシャイ・ドレーガー症候群と各々の原著に従い称されてきました。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになっています。
多系統萎縮症は頭部のX線CTや MRI で、小脳、橋(特に底部)の萎縮を比較的早期から認めます。この変化をとらえるには T1強調画像矢状断が有用です。また、T2強調画像水平断にて、比較的早期から橋中部に十字状の高信号(十字サイン)、中小脳脚の高信号化が認められます。これらの所見は、診断的価値が高いとされています。被殻の萎縮や鉄沈着による被殻外側部の直線状のT2高信号、被殻後部の低信号化などもよく認められます。
予後
多系統萎縮症では線条体が変性するので、パーキンソン病に比べて抗パーキンソン病薬は効きが悪く、小脳症状や自律神経障害も加わってくるため全体として進行性に増悪することが多とされています。我が国での230人の患者を対象とした研究結果では、それぞれ中央値として発症後平均約5年で車椅子使用、約8年で臥床状態となり、罹病期間は9年程度と報告されています。
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