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指定難病の1つである高安動脈炎は、大動脈弓とその分枝血管に障害を引き起こすことが多く、狭窄、閉塞を来した動脈の支配臓器に特有の虚血障害が表れたり、拡張病変による大動脈瘤が出現します。病変の生じた血管の支配領域により臨床症状が異なり、症状は多彩です。病名は、発見者の高安右人氏の名に由来しています。 患者の9割が女性で好発年齢は10歳代〜30歳代と若く、登録患者数は7000人ほどとされています。肩こりや頭痛が続いても患者自身が病気として捉えていないことが多く、受診しても若い女性によくある頭痛などとして対処されているケースもあり、実際は登録数の数倍の患者がいる可能性もあります。
・高安動脈炎を疑う8つの所見
1)40歳以下の女性
2)上肢の血圧左右差(10mmHg以上)
3)上肢の跛行
4)血管雑音(頸部、鎖骨下、腹部)
5)頸部痛
6)背部痛
7)めまい
8)歯痛
8つの所見で複数項目が該当すれば高安動脈炎を強く疑い、症状が持続する場合には血液検査でCRPや血沈などを調べて陽性ならば、高安動脈炎の可能性は高くなります。
改訂ガイドラインで示された高安動脈炎の診断基準は、全身症状または局所症状(疼痛、眼症状、頭頸部症状、上肢症状、下肢症状、胸部症状、腹部症状、皮膚症状)のうちいずれか1つ以上が表れ、かつ画像検査所見として、大動脈とその第一次分枝の両方あるいはどちらかに肥厚性病変、狭窄性病変、あるいは拡張性病変が検出されること。巨細胞性動脈炎、動脈硬化症やIgG4関連疾患などの鑑別疾患が除外された場合に、高安動脈炎と診断されます。
高安動脈炎は、大動脈だけでなく全身の臓器・組織に病変が生じます。2017年8月に生物学的製剤のトシリズマブ(商品名アクテムラ)が保険適用され、ステロイドと併用することでより高い治療効果を期待できるようになりました。
トシリズマブは抗IL-6受容体モノクローナル抗体であり、関節リウマチなどの治療に使用されています。高安動脈炎患者では、IL-6値が健常人と比較して高値を示すことが報告されており、ステロイドに抵抗性の患者や、漸減に伴い再燃した患者にトシリズマブを用いることで、ステロイドを短期間で減らすことができるとの報告もあります。改訂ガイドラインでも、トシリズマブはステロイドとともに「推奨クラスI」と位置付けられています。
また、高安動脈炎の治療を後押しするのが、FDG-PET検査の保険適用です。2018年4月の診療報酬改定で、高安動脈炎などの大型血管炎の診断のためのFDG-PET検査が保険適用となりました。既に大動脈炎と診断がついている患者で、他の検査では病変の局在や活動性の診断がつかない場合に限り保険請求できます。
トシリズマブはCRPを陰性化し、CRPによりトシリズマブの治療効果を測定できないという問題があるため、FDG-PETでの画像検査は有用な評価手法となります。「トシリズマブの治療開始前にFDG-PETでSUV(病変への放射性薬剤の集積程度)を測定し、1年後に再度FDG-PETでSUVの測定を行うことで治療効果などを的確に把握できるようになり、FDG-PET検査が保険適用になったことの臨床的意義は大きいと考えられます。
※FOG-PET(PET-CT)
PET-CT検査とは、CT装置を併用することで、時間差による画像のずれを防ぎ、高精度に位置合わせが可能になります。そのため、さらに鮮明な画像で、腫瘍の位置や大きさを撮影することができ、より詳しく分析できます。FDGはフルオロデオキシグルコースというグルコース(ブドウ糖)に似た薬です。その薬に放射性同位元素である18F(フッ素18)を標識したものが検査で使用する18F-FDGです。
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