ステロイドの副作用で重篤なものには、感染症・骨粗しょう症・糖尿病・脂質異常症・副腎不全・精神障害・血栓症・緑内障などがあり、比較的軽症なものには、中心性肥満・ムーンフェイス・多毛・食欲亢進・浮腫・電解質異常・筋症・皮下出血などがあります。
生体内において、IL-6やTNFαといった炎症性サイトカインの産生は、異物からの防御機構として働きます。しかしながら、ステロイドはこれら炎症性サイトカイン産生をゲノム的作用により抑制します。炎症性サイトカインの産生制御は、さまざまな影響をもたらします。臨床で炎症マーカーとして汎用されるCRPは、IL-6などの炎症性サイトカインによりその産生が亢進します。ステロイドの投与により、炎症性サイトカインの抑制がおこりCRPの産生を抑制します。さらに体温上昇も抑制されるため、ステロイド投与中はCRPや体温を基準に炎症反応を推測することが困難になります。
さらにステロイドは、好中球における接着因子の発現を低下させます。これにより好中球の炎症部位への遊走が阻害されます。また、ステロイドは、骨髄内に存在する成熟好中球プールから末梢血液中への動員を誘導します。このような作用により、末梢血中の好中球は増加します。生体内で感染などの反応が起こった場合も同様に末梢血中の好中球が増加しますが、その意味合いは全く異なります。
また、ステロイドはCD4陽性ヘルパーT細胞(Th)数を低下させます。特にステロイドはTh1に対して強く反応を示します。この結果、細胞性免疫が低下します。また同様にB細胞数も低下させることで液性免疫が低下します。
このような炎症反応白血球に対する作用は、宿主を強い免疫抑制状態に陥れ、易感染状態となります。さらにステロイド投与中は免疫反応が抑制されているため、炎症反応が顕在化されづらく、感染症のサインの見落としに注意が必要です。特に細胞性免疫の低下が著しいため、ニューモシスチス肺炎や結核、アスペルギルス感染症、単純ヘルペスウイルス感染症などに注意が必要です。ステロイドによる感染症は、ステロイドの用量依存的にその発症リスクが増大します。これまでの報告から、プレドニゾロン換算で1日10~20mg以上または積算量として700mg以上内服した場合、感染症の発症リスクが増加するとされています。これはステロイドの投与量が多いほど、投与期間が長いほど、感染症のリスクが増大することを示しています。特に、プレドニゾロン換算で20mg以上のステロイドを4週間以上内服する場合は、ニューモシスチス肺炎の予防のため、スルファメトキサゾール/トリメトプリム配合錠を予防的に内服することが推奨されています。
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