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これまでに、尿中から分離されたエクソソームより、1,000種類以上の蛋白質が同定されていますが、回収されるエクソソームの量が少ないため、定量的な検討が難しいのが現状です。このため、疾患マーカーとして確立しているエクソソーム中の蛋白質は多くありません。
エクソソーム中から同定された蛋白質で腎障害などとの関連性が報告されているものでは、急性腎障害における抗炎症活性を持つfetuin-A、塩基性ロイシンジッパー構造をもつ転写因子であるATF3(activating transcription factor 3)、腎の発達に重要な転写因子であるWT-1(Wilm's Tm\umor 1)、腎における陰イオンの再吸収を担う膜蛋白質であるOAT(orbanic anion transporter)、急性腎不全の早期診断マーカーとして期待されているNGALがエクソソーム中で増加することが報告されています。
糖尿病性腎症では、急性腎障害と同様にWT-1、糖尿病患者の血中で濃度が高いことが知られているDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)、腎臓の近位尿細管障害で発現するメガリンで処理されるα1-マイクログロブリンとトリプシン阻害活性をもつbikuninが複合体として発現しているAMBP(α-microglobulin/bikunin precursor)などが増加することが報告されています。
一方、IgA腎症では、プロテアーゼ阻害剤であるα1-アンチトリプシン、銅の輸送蛋白質であるセルロプラスミン、ペプチドの消化酵素であるアミノペプチダーゼNなどは増加し、同じ糸球体の障害でも、エクソソームに含まれて増加する蛋白室は異なるものが報告されています。
腎臓がその機能を発揮するためには、イオン・水・水溶性の有機化合物が脂質二重膜からなる生体膜を通り抜ける仕組みが必要であり、そのために種々の膜輸送蛋白質(トランスポーター)が存在します。なかには腎臓に高頻度に発現しているものがあり、トランスポーターの異常は腎障害、腎疾患に関与している可能性があります。OATもその中の1つですが、最近になって、主にカルニチンを輸送する、両イオン対応のトランスポーターであるOCTN2(organic cation transporter novel 2)が尿中エクソソーム中に存在すること、単離されたエクソソームから抽出したOCTN2は構造とその機能のいずれも保たれていたことが報告され、細胞間の情報伝達にかかわるエクソソームが、内包する蛋白質を遠く離れた細胞で放出し、機能させる可能性を示唆しています。このことから、エクソソーム中の蛋白質は、関連する病態を予測するバイオマーカーの候補分子として考えることができます。
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