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パーキンソン病

改訂ガイドラインでは、運動緩慢が見られることを必須の条件とし、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか、あるいは両方が見られるものをパーキンソニズムと定義しました。

パーキンソン病

パーキンソン病(Parkinson's disease)は、手の震え・動作や歩行の困難など、運動障害を示す、進行性の神経変性疾患です。進行すると自力歩行も困難となり、車椅子や寝たきりになる場合もあります。40歳以上の中高年の発症が多く、特に65歳以上の割合が高いとされています。
錐体外路症状を呈し、アルツハイマー病と並んで頻度の高い神経変性疾患と考えられており、日本では難病(特定疾患)に指定されています。本症以外の変性疾患などによりパーキンソン様症状が見られるものをパーキンソン症候群と呼びます。 中脳黒質のドパミン神経細胞減少により、これが投射する線条体(被殻と尾状核)においてドパミン不足と相対的なアセチルコリンの増加がおこり、機能がアンバランスとなることが原因と考えられています。
今年5月、7年ぶりに改訂された日本神経学会の「パーキンソン病診療ガイドライン2018」では、診断において、パーキンソニズムの定義を変更しました。薬物療法に関しては、より早期からドパミン補充療法を行うことでの重要性を強調し、運動合併症のリスクが高い場合の選択肢にはMAO-B阻害薬を加えました。

今回の大きな改訂点の1つであるパーキンソニズムの定義の変更では、これまでのガイドラインでパーキンソニズムの定義を、典型的な左右差のある安静時振戦、筋強剛、運動緩慢、姿勢保持反射障害の「4大症候」うち2つ以上が存在することとしていましたが、改訂ガイドラインでは、運動緩慢が見られることを必須の条件とし、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか、あるいは両方が見られるものをパーキンソニズムと定義しました。姿勢保持反射障害を定義から外した点が大きな特徴です。これは、姿勢保持反射障害が進行期になってから出現し、早期に出現する場合は他疾患の可能性が高いことが分かってきたためです。

近年、補助診断法も導入され、特に画像診断が診断基準に反映されています。その1つがMIBG心筋シンチグラフィーによる診断です。MIBG(3-indobenzylguanidine)とは交感神経遮断薬であるグアニジンのアナログであり、交感神経終末でノルアドレナリンと同様の生理動態を持つ物質です。パーキンソン病では心臓のMIBG集積が低下することが分かっています。MIBG心筋シンチグラフィーは、パーキンソン病以外の疾患と鑑別する際の特異度が80%以上と高いことが報告されており(Treglia G et al. Clin Auton Res. 2012;22:43-55.)、MIBG集積低下はMDSの診断基準で「支持的基準」の1つに位置付けられています。

また、DAT(ドパミントランスポーター) シンチグラフィーで正常画像が認められることが「絶対的除外基準」と位置付けられました。DATシンチグラフィーは、線条体にあるドパミン神経細胞終末のシナプス前機能を評価することができ、パーキンソン病ではDATの集積低下が認められます。
さらに画像診断以外の補助診断法の1つとして盛り込まれたのが、嗅覚検査です。嗅覚低下はパーキンソン病患者の90%に認められ、他のパーキソニズムと鑑別する上での感度は高い。パーキンソン病患者によく見られる安静時振戦が出現する割合が、50〜70%であることを考えると、嗅覚症状は頻度が高く特異性が高いといえます。パーキンソン病の主要な運動症状にも頻度としては劣らないため補助診断としての有用です。

薬物療法に関しては、パーキンソン病と診断された症例に対して、早い段階からドパミン補充療法を行うことの重要性が強調されています。パーキンソン病は、中脳黒質の神経が変性してドパミンの放出が減少して発症すると考えられています。特にドパミンの前駆体であるL-ドパ補充療法は運動症状に対して有効的だ。しかし、L-ドパは長期使用に伴う薬効減弱、薬効時間の短縮(wearing off)やジスキネジアの運動合併症が高頻度で発現します。L-ドパと、L-ドパより効果がマイルドなドパミンアゴニストをどのように使い分けるかがポイントになってきます。
一方、早期パーキンソン病で運動合併症の発現リスクが高いケースについては、ドパミンアゴニストあるいはモノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬を選択することを推奨しています。新たにMAO-B阻害薬を選択肢に加わえています。その背景には2015年12月にYahr重症度ステージでI〜IIIにおいてセレギリン(商品名エフピー)の単剤での投与が保険診療で可能になったほか、今年6月に不眠症などのリスクが少ないラサギリンメシル酸塩(アジレクト)が発売されたことがあげられます。

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