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タウ(ギリシア文字のτ)蛋白は、神経軸索内に存在する分子量約5万の微小管結合蛋白です。微小管の重合を促進・安定化する作用を持ち、細胞骨格を形成して神経細胞内の蛋白質輸送に貢献しています。細胞内輸送の通路として機能しているタウ蛋白ですが、多数のリン酸化部位が存在し、リン酸化を受けることで不溶・凝集化して組織に沈着するという弱点を持っています。リン酸化で微小管が不安定になると、細胞内の物質輸送を妨げることになり、神経細胞毒性を生じ、最終的に認知症につながると考えられています。
タウ蛋白は、アルツハイマー型認知症の病理学的変化像である「アルツハイマー神経原線維変化(paired helical filaments:PHF)」の主要構成成分ですが、他の神経変性疾患においても、その異常蓄積が報告されています。このようにタウ蛋白が蓄積し、神経細胞死を起こす一連の疾患群をtauopathyと呼び、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)や進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)など、非アルツハイマー型認知症の原因であるとも考えられています。
認知症にはいくつかの型が存在するため、病型の適切な診断を行うことで、それぞれに適した治療や看護体制に結びつけることが期待されます。
・代表的な認知症の臨床的特徴像
1)アルツハイマー型認知症(AD)
短期記銘力の低下に始まり、言葉が出て来ない・計算力の低下・場所や時間・空間の認知力低下が年余の経過で進行します。他人の言葉が理解できなくなり、妄想・焦燥に陥り、やる気の低下・人格の変化・うつ状態を呈するようになります。様々なことに対し無関心となり、ときに火の不始末など問題行動や徘徊などの異常行動がみられます。進行すると、周囲との意志疎通が困難となり、運動障害、失禁などを来たし、寝たきりとなります。
2)前頭側頭型認知症(FTD)
前頭葉や側頭葉に限局した萎縮がみられ、典型的病型はピック病とも言われます。記憶力は比較的保たれながら、著しい人格変化が認められるのが特徴で、自己中心的な性格となり無遠慮な振る舞い、判断力の低下、病識の欠如が認められます。ADより比較的若年で発症し、認知症の10%程度を占めるとされています。
3)レビー小体型認知症
大脳皮質にαシヌクレインという蛋白質で構成されるレビー小体が現れ、神経変性が進行する疾患です。記憶障害は比較的軽度ですが、妄想や「死んだ〜が見える」などの幻覚、幻視を認める場合が多くみられます。方向感覚の低下、寝言など睡眠異常がみられ、認知症の約20%を占めるといわれています。
4)血管性認知症
多発性ラクナ梗塞や脳出血など脳の血管障害によって起こる認知症です。イベントを反復することで悪化します。高血圧や脂質異常症・動脈硬化・糖尿病など生活習慣病を基礎疾患に持つ場合が多く、進行抑止にはこれらの治療が必要となります。
これらの鑑別に、髄液中のタウ蛋白やリン酸化タウ蛋白が有用とされていますが、高値は上記のうちADやFTDでよくみられ、このほかプリオンの感染により発症するクロイツフェルト・ヤコブ病など、一部の神経疾患でも認められることがあります。
・タウ蛋白
検査材料:髄液
測定方法:ELISA
基準値:単位(pg/mL)1200未満
リン酸化タウ蛋白
検査材料:髄液
測定方法:ELISA
基準値:単位(pg/mL)50.0未満
高値を示す病態
タウ蛋白:アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、髄膜脳炎、前頭側頭型認知症、急性脳梗塞など
リン酸化タウ蛋白:アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病など
低値を示す病態
低値側での臨床的意義は少ない
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