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骨髄異形成症候群(myelodysplastic anemia:MDS)に対する網羅的遺伝子変異検査は次世代シーケンサーの登場によって、次々と新しい発見がなされています。
MDSでは1症例当たり2〜10個の遺伝子変異が認められ、これらの遺伝子変異を段階的に獲得していくことで発症し、二次性急性白血病(secondary acute myeloid leukemia:sAML)へ進展していくことが明らかになりました。これまでの研究成果によって、胚細胞由来の遺伝子変異のMDS発症への関与、加齢によるクローン性造血で認められる遺伝子変異、そしてsAMLへの進展に関与する遺伝子変異などが同定され、今後の臨床での応用が期待されています。
Polprasertらは、高齢で発症した家族性MDS症例においてRNAヘリカーゼ遺伝子であるDDX41の胚細胞変異を同定しました。家族性MDSでDDX41の胚細胞変異を片アレルに認める場合は、高率にその対側アレルにDDX41の体細胞変異が認められました。また家族でない孤発性のMDSにおいても同様の現象が認められています。
このことはDDX41変異のような胚細胞由来変異には体細胞変異を誘導する可能性が示唆され、今後このような胚細胞由来変異はMDS発症前診断として重要になるかもしれません。
加齢に伴い、造血幹細胞にDNMT3A、TET2、JAK2、AXL1、TP53、SF3B1、BCORL1なあどのMDSに認められる遺伝子変異を有したクローン性造血が認められることが明らかになりました。MDSは低リスク症例から経時的にsAMLに病態が進展していきますが、MDSの発症にはこのクローン性造血が強く関与している可能性が高く、MDSの病態の進展には、これらの遺伝子変異のアレル頻度が増大することだけでなく、新規の遺伝子変異を獲得することが必要であることも示されました。
Makishimaらは多数のMDS症例に対して経時的な遺伝子変異解析を行い、sAMLの進展に関与する遺伝子変異としてFLT3、PTPN11、WT1、IDH1、NPM1、IDH2、NRAS変異を同定しType1変異と定義しました。そして高リスクMDSに高頻度に認められる遺伝子変異として、Type1変異の遺伝子であるIDH2およびNRASに加え、GATA2、KRAS、TP53、RUNX1、STAG2、ASXL1、ZRAR2、TET2を同定しType2変異と定義しました。さらに低リスクMDSに高頻度に認められる遺伝子変異として鉄芽球性不応性貧血の原因とされているSF3B1を同定しました。これらの遺伝子変異による分類はsAMLへの進展だけでなく予後の層別化にも悠揚であることも示されています。
これまで、MDSの予後指標は血球の減少、染色体異常、芽球数で規定されていましたが、今後は遺伝子変異を組み込んだ新たな予後指標が提唱されると考えられます。
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