近年、鳥インフルエンザ(H5N1)が鳥から人に感染する事例が数多く報告されています。この鳥インフルエンザウイルスが変異し、新型インフルエンザが発生する可能性が危惧されています。
この新型インフルエンザは、人類のほとんどが免疫を持っていないために、容易に人から人へ感染します。さらに、人口の増加や都市への人口集中、飛行機などの高速大量交通機関の発達などから、短期間に地球全体にまん延すると考えられます。この世界的流行をパンデミックといいます。
人から人へ感染する新型インフルエンザの世界的流行は10年から40年程度の周期で起こるとされていますが、この数十年間は発生がありません。
日本政府は新型インフルエンザの発生に備えた行動計画を定め、人口の約1/4の人が感染し、医療機関を受診する患者数は最大で2500万人と仮定して、対策を講じています。また、過去に流行したアジアインフルエンザやスペインインフルエンザのデータに基づき推計すると、入院患者は53万人〜200万人、死亡者は17万人〜64万人と推定されています。しかし、これらはあくまでも過去の流行状況に基づいて推計されたものであり、今後発生するかも知れない新型インフルエンザが、どの程度の感染力や病原性を持つかどうかは不明です。
新型インフルエンザ発生時には、感染の広がりを抑え、被害をできる限り小さくするために、国や自治体における対策はもちろんの事、一人一人が必要な準備を進め、実際に発生した際は適切に対応していくことが大切となります。
パンデミックの対策は、毎年流行する季節性のインフルエンザ対策の延長線上にあります。季節性のインフルエンザに対する最大の防衛策はワクチンです。しかしながら、パンデミックが発生した際には、毎冬流行しているインフルエンザウイルスの状況を元に作成されたA/H1N1亜型とA/H3N2亜型のワクチン株を含む現在のインフルエンザワクチンの効果はほとんど期待できません。
現在世界中では、非医学的対策としての社会距離戦略が議論されています。すなわち、パンデミックといえども、ヒトからヒトへ感染する以上は、感染したヒトと、感染していないヒトが接触しなければ感染は広がらないので、この接触を可能な限り減少させるということです。国レベルの対策として、学校を閉鎖したり、公共施設や映画館などを閉鎖したり、あるいは集会を禁止したりということも考えられていますが、職場や家庭においても接触機会を減らすことは重要なことであり、パンデミックになった際に可能な限り感染している(かもしれない)ヒトとの接触を減らすために、どのような生活パターンとするか、あるいは外出機会を減らすために生活必需品を備蓄しておくなどを考えておくことが勧められます。
また、パンデミックを拡大させないためにもっとも重要なことが、感染者が自分が広げないように最大限の注意を払うと言うことであり、この基本となるのは、「Respiratory hygiene & Cough etiquette:呼吸器衛生と咳エチケット」です。すなわち、インフルエンザに罹患し、咳嗽などの症状のある方は特に、周囲への感染拡大を防止する意味から、咳やくしゃみをする際にはティッシュで口元を覆うか、マスクを着用してもらうということです。これは現在の季節性のインフルエンザでも有効ですし、インフルエンザに限らず、あらゆる呼吸器感染の拡大防止の基本です。自分自身も感染を避けるためにマスクを着用することも大切です。
新型インフルエンザ感染予防対策として、N95マスクが有効とされています。もちろん、室温、湿度の管理、バランスのよい栄養の摂取、手洗いとうがいなど、一般的な個人衛生と体調の管理も個人で行える対策です。
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